impromptu 音楽小説__マグマ
- 2021
- 所在地:大分県由布市由布院町 金鱗湖 CAFE LA RUCHE
- 用途:オンラインライブ映像配信
- 構造 規模:鉄骨造
- 設計・アートディレクション:TAKiBI
- 共同設計・アートディレクション:KiKi ARCHi
- 施工:松岡製作所 / 石田商店 / TAKiBI
- 企画・プロデュース:Namy&Records
- アーティスト:UQiYO
- ビデオディレクション | VJ:Hirotaka Russell Shimoyama
- カメラ:Takaaki Fujise / BOKEH(BOAT/YOHLU) / YaungTao(BOAT/MADE IN HEPBURN)
- ロゴデザイン:issei
音楽ユニット「UQiYO」のオンラインライブのアートディレクションを行った。
ライブが行われた大分県由布院町の金鱗湖は、温泉水の流入によって年間を通じて水温が高いため、気温が低い日の早朝には湖面から湯気が立ち上る幻想的な光景を体験できる名所として知られている。この自然現象と溶け合うようなパフォーマンスを実現させるために、湖から湯気が発生する日の出前から演奏を開始し、日の出と共にクライマックスを迎え終演するというライブスケジュールを決定した。
こうした条件のもとで「自然現象・アーティストが発する音+ライブタイピングテクスト・楽曲と連動する映像」というエレメントが混ざり合うことで生み出される複合現象をデザインすることを目指した。そのために私達はゆらぎのある線の集合と空隙によって構成される繊細なスクリーンを設計し、「光,風,湯気や風景・音の振動・映像の粒子」といった移ろいゆくものを紡ぎ編み、空間的に表象させることを試みた。このスクリーンは高さ3.5m-スパン3.5mの鉄骨柱2本の間に、3mmφの細糸を15mmピッチでカテナリー曲線状に架け渡すという、ローテクで汎用性のある構造とした。このようなスクリーンユニット2基をアーティストの両脇にハの字型に設置し、ステージ中央背面に湖と山並みを見通すことができる陣幕状のライブセットをつくりだした。スクリーンのサイズは運搬・組立寸法と、ステージとなるカフェデッキテラスの平面形状から決定している。また、投影される映像は線の集合体で構成されるスクリーンの特徴を生かし、相乗効果をもたらすような表現方法の工夫がなされている。
こうした試みの結果、エフェメラルで非日常的な現象を生みあらわし、アーティストの世界観を幻想的な物語・情景として具現化することができた。今後はこの手法を国内外の各地において発展させて、それぞれの場所の固有性に応じた知覚を揺さぶるようなパフォーマンスを創り上げ、環境インスタレーション的な表現やスクリーンユニットの進化を模索していきたいと考えている。